日色です。
先週4日、船橋市営住宅条例の一部を改正する条例を議員発議で提出しました。
今回は、会派の皆さんのご賛同をいただき、私が提出者となって提案理由説明を行いました。
何分初めてのことで、少々緊張しましたが、議場の皆様にご理解いただくために、丁寧な説明を行わせていただいたところです。
以下にその原稿を掲載しますので、長いですがお読みいただければ幸いです。
なお、これに対し2名の方から質問を受け、答弁にも立ちました。その模様は週明け以降にUPしたいと思います。
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船橋市営住宅条例の一部を改正する条例
提案理由説明
ただいま上程になりました船橋市営住宅条例の一部を改正する条例につきましてご説明いたします。
本案は市営住宅家賃の収納にあたり、入居者間の公平をかんがみ、適正な納付意識の醸成を図るとともに、円滑な収納事務を推進するためにご提案するものです。以下、その理由について申し上げます。
第1に、公平性の確保であります。
現在、本市の市営住宅には1229世帯が入居しており、それぞれの収入等に応じて家賃をお支払いいただいております。ほとんどの入居者の皆様におかれましては、正しく納期限内に家賃を納めていただいている一方、一部の入居者の方々においては、様々な事情により家賃を滞納されている状況です。
厳しい経済状況下においてもなお、きちんと納期限内に納付していただいている方と、そうでない方との間に、なんらの差も設けないことは、入居者間において著しい不公平感を招いていることと思われます。
現在の規定では、延滞金の徴収について「納付させることができる」との裁量規定になっておりますが、実際には延滞金は徴収されておりません。そこで今回、これを「納付しなければならない」との義務規定に改め、適切な延滞金の徴収を行うことで、公平性の確保を意図するものであります。
第2に、適正な納付意識の醸成であります。
現在、市営住宅家賃の収入未済額は平成20年度末決算額において約1億円と、市財政に大変大きな負担となっております。また、本定例会に報告されました通り、悪質な滞納者に対して建物明渡訴訟が提起されるなど、滞納家賃の収納督促業務にかかる人的・時間的・経済的コストは同じく市行政にとっても大きな負担となっております。
市営住宅の家賃は条例第14条、第16条等により、収入や個別の事情に応じて近傍同種家賃より低額に設定、また減免されているほか、生活保護世帯においては代理納付となるなど、いわゆる応能負担の制度となっていることから、たとえ低額所得者であったとしても、納付期限内に納めるべきものであることは自明の理であります。
しかしながら現在、先に述べたとおり巨額の滞納が累積している背景には、一部入居者の間に「市営住宅の家賃は期限内に納めなくともよい」といったモラルの低下があることが想像されます。
そこで今回、延滞金の徴収を義務規定に改めることにより、こうしたモラルの低下に警鐘をならし、適正な納付意識の醸成を意図するものであります。
また、今定例会での一般質問において、市税延滞金の徴収について、税務部長より「延滞金を徴収することは滞納の抑止につながる」とご答弁があったとおり、適切な延滞金の徴収により、さらなる滞納の抑止・減少を副次的効果として期待するものでもあります。
第3に、円滑な収納事務の推進であります。
今回の条例改正案提出の発端となりましたのは、今定例会に報告されました建物明渡訴訟における請求額において延滞金が含まれていないことに対する疑問でありました。
報告に対する質疑で明らかになりましたとおり、今回の訴訟において市は、本来であれば請求することが可能であった債権をみすみす放棄するという事態になりました。
こうした不適切ともいえる事務執行の背景には、長年にわたる事務のなかで生まれた「市営住宅の家賃は延滞金をとらない“もんだ”」という思い込みと、「納付させることができる」というあいまいな裁量規定の存在があったと考えます。
さまざまな事情を抱えた滞納者との折衝業務にあたり、こうした裁量規定の存在は担当職員による取り扱いの差を生みかねず、紛争の元となる可能性を否定できないほか、担当者にとっても逐一その判断を迫られることは大きな負担となることから、今回この規定を義務規定として一律のものとすることで、円滑な収納業務の推進を意図するものであります。
同時に、ただし書きとして1000円以下の少額な延滞金についてはこの限りでないと定めることで、臨戸徴収等、現場での収納業務に支障をきたすことの無いように配慮するほか、附則として、施行までに十分な周知期間を確保するとともに、入居者に対し不利益が遡及することのないよう本改正案の規定は施行日以後に納期限が到来する家賃についてのみ適用することとしています。
なお、本項に続く18条第3項の規定、すなわち、やむを得ない事由がある場合には延滞金を減免することができるという規定に変わりはないことから、本改正によって延滞金の徴収が義務規定とされたとしても、同規定を適切に運用することにより、やむを得ない事由のある低額所得者・住宅困窮者にさらなる負担を強いるものには決してならないことを申し添えます。
あわせて、議会運営委員会において一会派から示されましたご懸念に対しましても、この場をお借りしまして、提案理由に含めてご説明申し上げる次第です。
第1に、民間では商慣習として家賃の延滞金を徴収していないとのご指摘でありますが、これは事業者の経営方針や地域特性によるところが大きく、延滞金を徴収しないことが通例とは必ずしもいえないかと考えます。現に、市内最大の賃貸住宅事業者である都市再生機構、いわゆる公団住宅においては家賃にかかる延滞金を徴収していると聞いております。
また、延滞金を徴収しない民間業者においては、敷金額以上の滞納となった時点で即時に退去を求められている事例も多く見聞きしますことから、福祉目的の市営住宅管理においては延滞金を徴収することで公平性を確保することがより合理的であるとも考えられます。
第2に、分譲住宅における管理費の延滞金についてそれを認めないとする判例があるとのことでございますが、詳細はわかりかねますものの今回の議論と前提が大きく異なりますことから比較にはなじまないものと考えます。
第3に、悪質な延滞者と無理からぬ事由により延滞した者との峻別を図るためにも、現行上の規定がふさわしいとのご指摘でありますが、だとすると、やむをえない事由における延滞金の減免を定めた本条第3項の規定とあわせ、二重の裁量規定が存在する現状を放置することとなり、法規上の整合性を損ねるほか、先に述べたとおり円滑な収納事務を妨げるおそれがあるものと考えます。
第4のご指摘、市営住宅設置の社会的意義から考え、延滞金を積極的に納付させることは本条例になじまないのでは、とのことにつきましては、公平公正を大前提とする公営住宅であるからこそ、適切な延滞金の徴収を行うことが必要であると考えますので、ご理解を賜わりますようお願い申し上げます。
蛇足ながら、本案に対し万一皆様のご賛同をいただけなかった場合、議会として入居者・行政・市民に誤ったメッセージを発してしまうことにならないかと、はなはだ僭越ながら危惧をするものでもあります。
一に、現在の入居者および今後入居を希望する多くの市民に対し、市営住宅の家賃はある程度滞納しても何らのペナルティーがないという現状を議会として追認すること。
二に、担当課に対し、市の債権でもある延滞金は取っても取らなくてもよいことを議会として改めて認めること。それは同時に、債権回収の現場で大変なご苦労の上に顕著な実績を残されている、税務部をはじめとする熱意ある職員の方々に対しては、その誇りを傷つけ、士気を著しく阻喪させることにもなるでしょう。
重ねて、「延滞金はとらない(ないしとってもとらなくてもよい)」との意思を議会として示すことは、現在、延滞金を法・条例に基づき適切に徴収している市税部門等の現場において、本件との取り扱いの差を理由に徴収業務が困難になることも危惧されてなりません。
何よりも恐れるのは、弱者保護に力点をおいて公平性の確保をおろそかにするあまり、かえって福祉行政に対して納税者の意識が厳しいものとなり、弱者に対しいわれなき偏見や差別の目が向けられることであります。
先の建物明渡訴訟については広く新聞報道がなされ、多くの市民の知るところとなりました。滞納額の大きさもあいまって、「市営住宅とは税金で建てられていながら、なんといいかげんなところか」「皆、安い家賃もろくに払わずに住んでいるのか」「こんな輩を住まわせるために税金を払っているのではない」との厳しい意見、お叱りの声が私のところにも届いております。
これもまた率直な市民の声でありますが、こうした意見に対し丁寧に住民福祉の観点から市営住宅の必要性を説き、良好な市営住宅をこれからも維持していくためにも、公平かつ適切な事務の執行が絶対不可欠でありましょう。
本発議が、皆様の真摯な議論を経て可決され、自治体の責務である住民福祉の実現のための一助となることを切に願うものであります。
皆様におかれましてはよろしくご協賛くださいますようお願い申し上げます。
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